2016年10月8日土曜日

「インド人の同化能力」

ジャーディン・マセソンというイギリスの会社に
世界的なワイン評論家(イギリス人)を撮影しに行ったことがあります。

この会社は、元大英帝国東インド会社。
17世紀にインドを支配した会社です。
この会社がインドを征服して以降、イギリスのインド支配が始まりました。

今朝、ニュースソースに、インドのカースト制度的な差別が原因の悲劇がレポートしてありました。

それで、一時間ほど、カースト制について調べてみましたが、
そもそもカーストという名は、ラテン語が語源です。
元来、インドには階級的な社会構造や、賤民と呼ばれる人はいましたが、
現在、日本人が知るようなカースト制度はありませんでした。

実は、カースト制度は、大英帝国がインド支配のために、
押し付けた階級制度だそうです。
経済的に支配するために都合の良いもので、
アメリカの奴隷制度や人種差別構造と同じです。

しかし、

これは、大英帝国が押し付けたものだとは信じられないくらいに、インドに定着して、
あたかも、大昔からある階級構造のように思われてきました。
インド人は、良いものであれ、悪いものであれ、自分たち以外の文化をとても自然に同化してしまうところがあると思います。

アシュタンガ・ヨガの有名な標語「1%のセオリーと99%の訓練」。
これはインドの大英帝国陸軍の標語と似ています。

大英帝国陸軍の標語で有名なのは、「訓練、訓練」、「訓練と規律」。
訓練(Practice)と規律(Discipline)という言葉はかなりの頻度で登場します。
映画「ガンジー」の中でも、出てきました。

規律のもとに訓練する。という考え方とシステムを世界に普及させたのは大英帝国です。
もともと世界中にはこのような考え方はありませんでした。

近代ヨガの父、クリシュナ・マチャリア師は、王族と軍隊にヨガを教えていました。
軍隊担当は、当時、弟子のBKSアイアンガー師でした。

そのインドの軍隊とは、大英帝国陸軍管轄下のインド軍です。
ですから、クリシュナ・マチャリア師は、大英帝国陸軍の訓練方法や思想を、どんどん、ヨガに取り入れたのだと思います。
それが、ヨガにとっても良いことだと判断されたのだと思います。
そして、インドの格闘技カラリパヤットの技術も取り入れたことも有名です。

BKSアイアンガー師も、「軍人に精神的な世界が必要あるか?当時はヨガの精神的なことは全く考えなかった。
それを考えるようになったのは、60年代以降だ」。
と、インタビューで述べています(以下)。

https://www.youtube.com/watch?v=UCjEyjXO_Xw

ですから、クリシュナ・マチャリア師のヨガは、
最近評判になった「聖なる呼吸」のイメージとは違った、軍隊的なスパルタンなヨガだったのだと思います。
あの映画は、欧米人が東洋の神秘的なイメージで作った、欧米人のヨガのイメージです。
ですから、欧米の、それも、軍隊の影響については、言及しないと思います。
インドのイメージが壊れるからです。

このスパルタンなクリシュナ・マチャリアの訓練思想を
受け継いだのがパタビ・ジョイス師。
訣別したのがBKSアイアンガー師です。

ただ、BKSアイアンガー師が弟子の中で最も身体能力があって優秀だった(関係者の話や記録映像から推察)というのは興味があります。
BKSアイアンガー師は、その頃のクリシュナ・マチャリア師との確執についてもインタビューで語っています。

古来のヨーガの精神とポーズに、大英帝国陸軍の規律訓練の思想と、
大英帝国がインドに持ち込んだ、訓練用の、ジムナスティック(体操技術)をうまくブレンドさせたのが
クリシュナ・マチャリア師だったのです。

これは、モダンヨガが爆発的に世界に普及した大きな理由だと思います。
特に、欧米人の考え方に馴染むし、インド古来のミステリアスな雰囲気も兼ね備えているからです。

それまでは、インド、ネパール、チベットの、古来の伝統的なヨーガは、静かに、一部の人に浸透しているだけでした。
近代ヨガが普及する前にヨーガを始めた自分には、その変化がよく分かります。

あっという間に、世界中に普及したという感じでした。
元来、ヨーガはそのような普及をするような性格のものではないから、驚きでした。

近代ヨガは、あたかも、全てが古来のヨガのように誤解している人が世界中にいますが、
かなりの部分、技術的にも格闘技(カラリパヤット)、体操技術が取り入れられている事に気がつく人は、それらの経験者、関係者くらいだけだと思います。
それだけ、インド人が外来の文化を同化するのに長けているからだと思います。

ヒンズー文化が発明した数字の「ゼロ」という概念。
その概念を元に発展した欧米の数学。
それを再び取り入れたインド人には優秀なプログラマーが多いことは有名です。

この同化する能力というのは、インド人個人との付き合いでも目にすることができるインド人の大きな特徴だと思っています。


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