2017年5月19日金曜日

「メディカルヨーガ」

「メディカルヨーガ」 ”医学的側面から見た、病と不調を予防・治療する最高のヨーガ”
 ガイアブックス 定価(本体4,800円+消費税)
著者:クリスチャン・ラルセン、テーダ・ファン・レッセン、エヴァ・フォルステンレヒナー
監修:木村慧心 


この新刊本を読む機会を提供していただき、ざっと目を通してみました。

専門的で緻密な説明が多いので、最初は読み進めるのに難儀しましたが、的を絞って「前屈」のところを繰り返し読んでみて、自分のスポーツやヨーガの経験に照らし合わせていくと、自分の認識と合致しているところも多々あり、大変勉強になりました。 

本書は、ヨーガを始められたばかりの方や、先生になるための訓練を受けている方には向かないと思います。

どちらかと言うと、内容全て読んでみて、一定のノウハウが残るというものではなく、自分のヨーガ経験、指導経験を重ねていく過程で、自分の教えるノウハウを確認する、確立する上でヒントになるものであると言えます。
ヨーガの経験やノウハウが積み重なってくると納得、理解できる部分もありますので、分からないところは分からないままに読み進めても良いと思います。

ですから、読んで終わり。という性格の本ではなく、ある程度長期間座右の書として、置いておくような性格の本だと思います。

本書はドイツの医学書専門のティーメ出版から出版された初めてのヨーガ専門書でオリジナルはドイツ語です。

著者の基本的な考え方は「人は、見えない基本線(らせん原理)がいくつも張り巡らされて、さまざまな動作やポーズができる」。 というものですが、
この「らせん原理」というものが、実は、ヨーガと合致するものだと言うことは、少し読んだだけでも分かります。

上記のように「前屈」のところだけを読み返してみたのですが、
 掲載した前屈の写真、この脊柱に添ってラインが引いてあります。

これが著者が著書の中で言う理想的な脊柱のC字ラインです。

このC字の理想的なラインを作るために、背中をまっすぐに前屈する方法と、丸めた方法が簡単に説明してあります。

ここまでは、ストレッチでもおなじみのやり方です。
しかし、実は、ほぼ、このC字ラインの下に、クリッピングポイントとして重要な2つのバンダがあり、その2つのバンダを絞めたり弛緩させたりすることで、ポーズをスタートさせたり安定させたりします。

そしてバンダをコントロールするのが呼吸です。

私は、このC字ラインという言葉は初めて、この本で目にしました。 漠然とそのようなラインを自分の身体に意識はしていましたが、具体的なイメージとして、この本を読んでからは、そのC字ラインが自分の中に存在しています。

 こういことはとても大事なことです。

というのも、多くのスポーツやヨーガのアーサナはイメージの世界だからです。
自分がポーズしている姿はその場では見えません。
人間はそれをイメージしながら動いて形にしていきます。

それは理屈ではなくイメージの世界です。

動画は私が体操のパイク・プレスハンドスタンドをやっているところですが、
このパイク・プレスはアシュタンガ・ヨガの上級にも登場します。
Pike press from 井手宏幸 on Vimeo.
このパイク・プレスのスタートの時の立位前屈、これもC字ラインです。

このC字ライン上のクリッピングポイントにあるバンダを吐く息で意識しながら支点として(実際の支点は骨盤です)、倒立をスタートします。

これは前屈とは逆で、前屈で内包したC字の反発力を利用して、前方への重心移動とともに開放させるものです。

この時、C字を意識するのとしないのでは、今朝海岸でやってみたところ、全然違いました。

おそらく動画上ではそんなに違いはないと思いますが、意識の上で納得した動きは、その後、いろんな発展の仕方をします。

そういう意味でも、この本に紹介されてある理論は、自分の経験と認識の確認にもなり、ある時は、道標ともなる内容だと思っています。中には自分の誤った認識に気がつくかもしれません。

 最後に監修者の木村慧心先生の「監修にあたって」から印象に残った言葉。 「また、ヨーガ関係者にしても、全身の筋肉群の強化がヒマラヤ山中で培われた伝統的なアーサナの本質であることを忘れて、単なるきれいなポーズを取れるかどうかを実習目的にさせてしまっている場合が少なくない。これも本書が注意を惹起している種々の問題を引き起こす原因となっているはずである」。 

私も、筋肉群の強化もヨーガの前提でもあり、目的でもあると考えています。



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